ここしばらく半透明描画などの方法についていくつか考えたことを紹介して
きました。
・Direct3D 10 ShaderModel4.0 ピクセル単位の半透明ソートを行う
・Direct3D 10 ShaderModel 4.0 半透明ソート補足
浮動少数への畳み込みは、丸め込みの桁上がりの解決が必要なこと、仮数部の
情報量が限られていて格納時の効率が悪いこと、レイヤー数に上限があること
演算に Blend 機能を使うためRead 帯域をかなり消費するなどろいろと制限が
あります。
ところがドキュメントを調べていて非常良い方法があることがわかりました。
・NVIDIA SIGGRAPH 2007 Stencil Routed A-Buffer
Multisample のハードウエアの機能を、非常に効率よく使った手法です。
最初説明でも書いたとおり、フレームバッファに値を蓄積するためには
直前の出力を受け取る必要があります。現状これが可能なのは
・RenderTarget Blend
・DepthStencil
の2つだけです。Blend の場合は値の演算ができるものの、Depth や Stencil
はテストと更新だけに限られます。またテストの結果は描画するしないの
bool 判定であり、MRT 等で複数の出力を持っていても同じ結果が反映されます。
MRT すべて書くか、すべて書かないかの二通りしかできません。
もし MRT 毎にそれぞれ異なる Stencil Test や Stencil Operation が設定
できれば、かなりできることが広がるでしょう。無理やり浮動少数の演算に
押し込めていた履歴による値の選択と切り捨てが、もっときれいに実装できる
ようになるはずです。
Stencil Routed A-Bufferはまさにこの、複数の出力に対する異なる
Stencil Test を実現可能にします。
Multisample anti-aliasing は数倍の解像度のフレームバッファにレンダ
リングします。このとき Shader 自体の pixel 出力は同一の値が用いられる
点が Supersample と異なります。
これを利用すると、同じ値を一度に複数書き込む手段として活用することが
できるわけです。
Multisample で8倍などの高解像度 RenderTarget を実現するには、
同じように Zバッファも必要です。付随して Stencil も同じ分だけ持っている
ことになります。
Stencil Test や Stencil Operation は全 pixel 同じ操作となりますが、
Stencil の初期値をずらすことで各ピクセル個別に操作することができる
ようになります。
これでピクセルごとに描画回数の保存と、回数に依存した書き込むピクセルの
選択が可能となりました。
あとは書き込まれた値に個別にアクセスする手段があれば十分です。
アクセス手法は後ほどもう少し調べます。
この辺の機能もやはり Direct3D 10.1 では Multisample 周りの機能が拡張
されていくようです。Programmable AA sample Pattern にしても、この辺を
踏まえての機能拡張だったのかもしれません。
とにかく GPU のハードウエア機能を活用するだけで、ほぼ要求を満たして
いることになるので非常にすばらしいです。まだ試していませんが、
かなり使える手法です。いろいろ実験してみたいと思ってます。
というか今更ですが、全くこれらのメジャーな文献を読んでいなかったことが
本当に信じられないくらい恥ずかしい限りです。
全くの無知のまま、いろいろ書いていた説明の数々、一応読んでくださった方
親切に無視してくださった方、
そしてこれら Realtime Graphics の研究に携わっている先人の方々に深く
お詫び申し上げます。
ごめんなさい。