Android 上で動く Linux 開発環境 (ターミナル)

スマートフォン Pixel の新しい OS 更新 (Android 15 2025/03/05 BPA1A.250305.019) で Linux 開発環境 (ターミナル) が使えるようになりました。まだ試験運用版 (Experimental) なので制限もありますが、普通のスマートフォン上で Debian の仮想マシンが動いています。Chromebook (ChromeOS) の Linux 開発環境や Windows の WSL2 と同じように Linux 向けのアプリケーションをそのまま走らせることができます。

以下の手順や注意事項は 2025/03 (試験運用) 版のものです。今後更新によっていろいろ変わる可能性があります。

有効化手順

  1. 作業中はスリープしないように、先に自動消灯時間を変更しておくことをお勧めします
    • 設定 → ディスプレイとタップ → 画面自動消灯 → 30分に変更
    • インストールや初期設定が終わったら元に戻してください
  2. もしまだ「開発者向けオプション」が有効になっていない場合以下の手順で有効化します
    • 設定 → デバイス情報 →「ビルド番号」を何度か(7回)タップして「開発者向けオプション」を有効化
  3. Linux 開発環境を有効化します
    • 設定 → 開発者向けオプション → Linux 開発環境 →「Android で Linux ターミナルを実行する」を On
  4. これでアプリ一覧 (アプリドロワー) に「ターミナル」アプリが追加されるので「ターミナル」アプリを起動します
  5. 初回は「インストール」をタップして 565MB のデータをダウンロードします
    • ダウンロードに時間がかかりますが、そのまま画面を切り替えないようにしてください
    • インストールが終わり「ターミナルを準備しています」の画面が始まったらコンソール画面になるまでしばらく待ちます
    • ターミナルが起動して Debian のコンソール画面になります
  6. ストレージサイズの変更 (オプション)
    1. デフォルトでは 5.9GB しか割り当てられていないので、先にストレージサイズを増やしておくことをお勧めします。不要な場合はスキップして構いません。
    2. ターミナルで以下のコマンドを実行
      • sudo halt
    3. 「Press ↲ to Recoonect」と表示されたらターミナルの右上の設定アイコン(歯車)をタップ
    4. 「ディスクサイズを変更」を選択し、5.9 GB から最大の 16GB まで増やして「適用」
    5. 自動的にターミナルが終了します
    6. もう一度ターミナルアプリを起動します
      • もしここで「修復不可能なエラー」と表示されてもリカバリしないでください
      • 一旦ターミナルアプリをタスク管理画面で終了させてから起動し直すと正常に繋がります
  7. 以下のコマンドを入力して OS の更新をします
    • sudo apt update ; sudo apt upgrade -y
    • 時間がかかりますが、終わるまでスリープさせずそのままの画面を維持しておいてください
  8. 更新が終わったら 1. で行った画面の自動消灯時間設定を元に戻します。

あとはそのまま Linux 環境として使えます。Docker も使えますので様々なアプリケーションを走らせることが可能です。Bluetooth キーボードがあると便利かもしれません。

※ 画面の自動消灯時間設定を元に戻すのを忘れないようにしてください。

トラブル対策など

ターミナルアプリと VM は別のプロセスですが連動もしています。おそらくターミナル起動時に VM が立ち上がり、終了すると VM も終了するようになっているようです。ただし VM が先に終了してターミナルだけ起動している状態になると Reconnecting 表示のまま進まなくなります。この場合はターミナルを起動し直してください。

修復不可能エラー画面が表示されても、よほどのケースでない限りリストアは不要なようです。リストアしても、同じ手順を行うと結局同じ状態になってしまうので、まずはターミナルの再起動を優先してください。

初期ストレージサイズが 5.9GB しかないため、大きなアプリケーションをインストールしようとすると途中でストレージがあふれてしまうことがあります。いろいろインストールを考えている場合は先に最大の 16GB まで拡張しておくことをお勧めします。

メモリ (RAM) を多く消費している状態で他のアプリに切り替えたりバックグラウンドに移行すると、VM のプロセス自体が kill されてしまうことがあります。インストール途中で強制切断されると中途半端な状態になってしまうので、初回のインストールや更新中は画面を切り替えないようにしてください。

その他気がついたこと、制限など

本体ストレージへのアクセス

/mnt/shared で本体ストレージの Downloads にアクセスできるようです。Android 側のブラウザでダウンロードしたファイルにアクセスすることができます。

また VM のストレージサイズが 16GB に制限されているので、大きなデータファイルをこちらに置いておくと容量を節約できるかもしれません。

RAM 容量

Pixel 8 (VRAM 8GB) を使用していますが、Linux VM 側で使用可能なメモリは 4GB 固定でした。そのためメモリを大量に使うコマンドは、Termux 上では動作するものの Linux VM (Linux 開発環境) ではメモリ不足で実行できない場合があります。

実際に Termux 上では ollama を使って LLM の gemma3:4b (6.4GB) を起動できますが VM 側 (Linux 開発環境) ではメモリ不足で読み込めませんでした。qwen2.5:3b (2.6GB) は動きます。

もしかしたら RAM を 12GB/16GB 搭載している他のデバイスではメモリ割り当てが異なってるかもしれません。

CPU は Tensor G3 の 9 コア全部有効になっています。

ターミナル

ターミナルはブラウザ上で動いているようです。

ターミナルを複数画面開くことはできませんが、sshd を起動して Android の ssh Terminal アプリや Termux を使えば複数のコンソール画面を使い分けることができます。なお ssh 接続する場合はデフォルトユーザーの droid にパスワードを設定しておく必要があります。

  1. sudo apt install openssh-server
  2. sudo passwd droid

自分の環境では VM に 192.168.0.2 が割り当てられていました。ssh Terminal アプリなどから droid@192.168.0.2 でログインできます。Termux の場合「ssh 192.168.0.2 -l droid」です。

リモート接続

VM にはプライベート IP が割り当てられているためスマートフォンの 外部からはそのままでは繋がりません。PC 等から ssh 接続したい場合は Termux を踏み台にしたり、VM 側から ssh でトンネルを作る必要があります。

VM 側
$ ssh -l <PCUSER> -R 9022:127.0.0.1:22 <PCIPADDR>

PC 側
$ ssh -p 9022 -l droid 127.0.0.1

私は VM 側 (Linux 開発環境) に Linux 版 Tailscale をインストールして接続しています。

対応機種

現時点では Google Pixel (Android 15) のみとなっているようです。

OS 標準の Linux 環境なので、特別なアプリをインストールしたり複雑な設定なしに使えるのは非常に便利です。まだ不安定な部分はありますが、利用できるアプリケーションの幅がだいぶ広がりました。スマートフォンには高性能な端末も多いので、Pixel 以外の対応も待ち遠しいです。