日別アーカイブ: 2006年11月20日

ハードの進化を否定するのはいいことなのか

ゲームの開発が大変になったと良く聞きます。ハードの性能が上がってより高い
クオリティのものが作れるようになったし、同時にユーザーが求める内容も
あがります。
その分だけ物量も必要で開発人数も増えて規模が大きくなりました。

ますます分業化が進んで個々の作業はさらに専門化し、作る人と考える人の距離が
遠ざかります。作り方を理解し作業工程まで工夫した設計がなかなかできず、
物量に頼る機会がますます増えてしまいます。

ハードの進化についていけずに、力技の対応で食いつないできたつけが回ってきたの
かもしれません。

開発がついていけないからといってハードの進化を否定するのは少々強引な気が
します。既存の環境やハードウエアなら使いこなしているから開発の負担が減る
だろうという考えも少々短絡的ではないでしょうか。

使っていればやっぱり不満点や足りない点が出てくるものです。あと少し、もう少し
だけここが改良されていればここまでできたのに、あともうちょっとメモリがあれば、
もうちょっと CPU が速ければ、クオリティがあがるのに、などなど。

進化しなければその同じ制限に再び悩まされることになります。世の中では、
例えば PC では当たり前に解決されていることであっても、進化を止めてしまったら
古い手法を使い続けなければなりません。

PC のスペックはものすごい速さで進化しています。10年前と比較すると 40倍の
CPU 速度に 20~30倍のメモリ量に、10倍の HDD 容量などなど。だからとって
プログラマの作業が極端に大変になったかといえばそうでもありません。

ハードが進化した分制限が無くなり、メモリや CPU速度に余裕が生まれて新しい開発
手法も使えるようになっています。class ライブラリが整備され、デバッガも高機能
になって、スクリプト言語による開発も幅広く用いられるようになりました。

メモリやディスクを大量に消費する重いアルゴリズムでも以前と比べると気楽に
使えます。

もちろん新しいことを覚え続けなければならないのは当然だけど、むしろ制限は
減ってきています。

前の世代でぎりぎりまで使い切って、限界が見えていればいるほどハードの進化は
歓迎すべきものでしょう。もしかしたら使いこなせていないときは、ハードの進化
が重くのしかかってくるのかもしれません。

同じように、データの作成手法でもさまざまな変化が必要でしょう。性能があがった
ことでいくらでもデータの作りこみができるようになりました。

2D 時代に例えれば色数に制限が無くなったようなもので、描こうと思えばどんな
絵でも出ます。パレットやチップが足りないといった言い訳はできなくなったし、
本当に力を入れるべき表現のポイントを絞らなければならないでしょう。

また不要な手間はできるだけ省き、人間が手でやる必要が無い部分は徹底的に
ツール化していく必要があるでしょう。

リアルタイム 3D CG の進化はまだまだこれからです。始まったばかりです。

PS3 の Linux

Playstation3 で動く Linux について以前公式にニュースになっていましたが、
すでに動作するものが入手できるようです。

Impress の YDL の記事 2006/10/17

http://www.fixstars.com/
http://cell.fixstars.com/ps3linux/index.php/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8

Linux PC としても実用的なのかどうか、
またはリビングに置いた安価な PC として使えるのかどうか、
などといった実用面はさておき・・

一般ユーザーレベルにも Cell プログラミングの機会が与えられた点はかなり
興味深いところです。

ゲーム機などの専用ハードを、一般向けにもプログラミング用途で開放することは
これまでもありました。でも魅力的なものはそれほど多くはありませんでした。

(1) 発売後かなり期間がたってから、すでにハードとして枯れた状態で公開
(2) 専用のツールや言語を通した限定的なものでハードは直接見えない

発売直後は価格的にも性能的にも PC をはるかに凌いでいても、何年も経ってから
では PC に追い抜かれています。PC 以外をわざわざ使う意義はかなり薄くなって
しまいます。

ところが Playstation3 の場合は発売したばかりです。非常にスペックも高くて
まだまだ本業の開発メーカーもハードを完全に使いこなしていません。そんな中で
ハードに触れるようにするのだから、誰もが平等に Cell プログラミングのスタート
ラインに立てるということです。

面白そうだし、Cell 普及のためとはいえこの流れを作った SONY もみごと。
優秀なプログラマが育ってくれるとうれしいですね。