Direct3D11/DirectX11 (12) テセレータのレンダーステート他

●レンダーステート

テセレータにはレンダーステートがありません。
ID3D11DeviceContext::TSSet~ 等の命令は一切無し。
その代りになるのが Hull Shader のたくさんある attribute です。

[domain("tri")]
[partitioning("fractional_even")]
[outputtopology("triangle_ccw")]
[outputcontrolpoints(4)]
[patchconstantfunc("func")]
float4 main(
	InputPatch ip,
	uint id : SV_OutputControlPointID
	) : TSPOS
{
   ...
}

HullShader の attribute は単なるヒントではなく、Tessellator の動作そのものを
決定しています。
テセレータの動作を変えるにはシェーダーまるごと置き換える必要があり、レンダー
ステートとシェーダーが一体化しているともいえます。

今までのシェーダーからは少々特殊ですが、管理するオブジェクトが減るので扱いは
楽です。他のシェーダーでも、シェーダーとペアで使うことがわかりきったステートなら
シェーダーに含めてしまって構わないのかもしれません。

●Effect

ShaderModel 5.0 にはまだ Effect ( .fx, fx_5_0 ) が無いようです。
現在のベータ SDK では、core API を使って各シェーダーを個別に生成したり管理する
必要があります。
Effect (ID3D10Effect) を core API 化してしまった Direct3D10 と比べると
何となくトーンダウンしているようにも見えます。

これが方針転換なのか、単に未完成で beta に含まれていないだけなのかまだわかりません。
シェーダー数が増えて大変そうだし後者のような気もします。
だけど Shader Compiler の分離もあるので、D3D10 の反省を踏まえての仕様変更の可能性もあります。
ツールやゲームエンジン等の設計にも関わってくるので、今後どうなるのか気になるところです。

●Tessellator と Triangle patch

Tessellator が扱える patch のタイプには isoline tri quad の 3種類あります。
(Direct3D11/DirectX11 (9) テセレータによるアウトラインフォントの描画など)

quad / isoline はこれまでなんどか取り上げたとおり、テセレータは
float2 の DomainLocation (uv) を出力します。
tri の場合は 3次元の uvw を返します。

この u v w はそれぞれ、Triangle の 3頂点に対する割合(距離)を示して
います。(barycentric coordinates)

float3 v1, v2, v3;
pos= v1*uvw.x + v2*uvw.y + v3*uvw.z;

↓左から TessFactor = 222-2、333-3、444-4

tess tri

中 (InsdeTessFactor) を 2に固定して外側だけ割った場合。
↓左から TessFactor = 111-2、888-2、181-2

tess tri

右端(181-2)は、1 つのエッジだけ 8分割したものです。
以前アウトラインフォントの描画では quad あたり 1辺の分割に限定して isoline
を使いました。事前処理でこのようなプリミティブにきちんと分解できれば、
一度に複数のエッジを分割対象とすることも可能です。
まだまだ効率化はできるでしょう。

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