DirectX SDK November 2008 Technical Preview 4回目です。
●DirectX SDK November 2008 の隠れた変更 (D3D10)
以前作成した D3D10 用プログラムのコンパイルが通らなくなったため調べたところ
今回から D3DX10DisassembleEffect() が無くなってるようです。
Compiler 改良のため core API でなく D3DX になったのは良いのですが
仕様が変わるのは困ります。
D3D11 では HLSL コンパイラは D3DCompiler.h に統合され、バージョンに関係ない
共通 API に進化しているようです。blob 等の API は D3D10 のまま。
こちらの方に D3DX10DisassembleEffect() の後継らしき
D3DDisassemble10Effect()
がありました。でも D3DCompiler.h は d3d11shader.h を include しているので
D3D10 ではコンパイルが通りませんでした。
●FeatureLevel 一覧
Driver (device type) 毎の FeatureLevel を調べてみました。
・RADEON HD4850 (8.10) HARDWARE = 10.1 (a100) REFERENCE = 11.0 (b000) NULL = 11.0 (b000) WARP = 10.1 (a100) ・GeForce GTX260 (178.24) HARDWARE = 10.0 (a000) REFERENCE = 11.0 (b000) NULL = 11.0 (b000) WARP = 10.1 (a100) ・GeForce 7900GTX (178.24) HARDWARE = 9.3 (9300) REFERENCE = 11.0 (b000) NULL = 11.0 (b000) WARP = 10.1 (a100) ・Intel 945/GMA950 (7.14.10.1461) HARDWARE = 9.3 (9300) REFERENCE = 11.0 (b000) NULL = 11.0 (b000) WARP = 10.1 (a100)
予想通り、D3D_DRIVER_TYPE_HARDWARE の場合のみ異なっています。
Reference と Null Reference はどちらも 11.0 です。
WARP は現在 10.1 までの対応でした。
上記よりわかるのは GeForce でも WARP を使えば 10.1 のテストが出来ること。
また 11.0 の動作を確認するには現状 Reference を使うしかないようです。
それにしても D3D11 になって、テスト用に GeForce7900 を復活させることに
なるとは思いませんでした。
付属 Direct3D11 サンプルの MultithreadedRendering11 は GeForce7900GTX でも
動作しました。(Direct3D10 はいったい何だったのか)
ちなみにサンプルは WARP に対応していないので、FeatureLevel が合わない場合
強制的に Reference Driver になります。
これは DXUT の問題なので、WARP に対応させる場合は DXUT を書き換える必要が
あります。
EeePC 901 (Vista) の Intel 945 (ShaderModel2.0) もなぜか FeatureLevel 9.3 を
返します。MultithreadedRendering11 は動作しませんでした。
D3D11_FEATURE_THREADING が未サポートなためかもしれません。
● D3D11_FEATURE_D3D10_X_HARDWARE_OPTIONS
マニュアルに載ってない FEATURE オプションとして
D3D11_FEATURE_D3D10_X_HARDWARE_OPTIONS があるようです。
これは D3D10 デバイス (FeatureLevel 4.0 or 4.1) でも、FeatureLevel 11.0 相当の
機能を一部有している場合に用いられるようです。
前回 fxc のプロファイルで ComputeShader 4.0 , 4.1 が存在していることを指摘
しました。D3D11_FEATURE_D3D10_X_HARDWARE_OPTIONS はまさに、D3D10 デバイス
でも ComputeShader が使えるかどうか調べるために用いられます。
現在 D3D11_FEATURE_DATA_D3D10_X_HARDWARE_OPTIONS のメンバは
ComputeShaders_Plus_RawAndStructuredBuffers_Via_Shader_4_x
だけです。
10.1 デバイスである WARP も FALSE でした。
よって今現在 ComputeShader を試すには Reference しか無いようです。
その他調べた FueatureSupport は下記の通り。
Reference と Null Reference で CheckFeatureSupport() の結果が異なるのが
気になります。cpas とどこが違うんだろうという気にならなくもないです。
REFERENCE 11.0 thread DriverConcurrentCreates= 0 thread DriverCommandLists= 0 double DoublePrecisionFloatShaderOps= 0 ComputeShaders_Plus_RawAndStructuredBuffers_Via_Shader_4_x= 1 NULL REFERENCE 11.0 thread DriverConcurrentCreates= 1 thread DriverCommandLists= 1 double DoublePrecisionFloatShaderOps= 1 ComputeShaders_Plus_RawAndStructuredBuffers_Via_Shader_4_x= 1 WARP 10.1 thread DriverConcurrentCreates= 0 thread DriverCommandLists= 0 double DoublePrecisionFloatShaderOps= 0 ComputeShaders_Plus_RawAndStructuredBuffers_Via_Shader_4_x= 0 HARDWARE 9.3 (GeForce7900GTX) thread DriverConcurrentCreates= 0 thread DriverCommandLists= 0 double DoublePrecisionFloatShaderOps= 0 ComputeShaders_Plus_RawAndStructuredBuffers_Via_Shader_4_x= 0 HARDWARE 10.1 (RADEON HD4850) thread DriverConcurrentCreates= 0 thread DriverCommandLists= 0 double DoublePrecisionFloatShaderOps= 0 ComputeShaders_Plus_RawAndStructuredBuffers_Via_Shader_4_x= 0
10.0 / 10.1 ハードウエアも、将来ドライバの更新でこれらの対応状況が変化すると
思われます。
●新テクスチャ形式
マニュアルには記載されてませんが、D3D11 の新しいテクスチャ形式はすでに
DXGIFormat.h に追加されています。
増えたフォーマットは下記の通り。
DXGI_FORMAT_R10G10B10_XR_BIAS_A2_UNORM = 89, DXGI_FORMAT_B8G8R8A8_TYPELESS = 90, DXGI_FORMAT_B8G8R8A8_UNORM_SRGB = 91, DXGI_FORMAT_B8G8R8X8_TYPELESS = 92, DXGI_FORMAT_B8G8R8X8_UNORM_SRGB = 93, DXGI_FORMAT_BC6H_TYPELESS = 94, DXGI_FORMAT_BC6H_UF16 = 95, DXGI_FORMAT_BC6H_SF16 = 96, DXGI_FORMAT_BC7_TYPELESS = 97, DXGI_FORMAT_BC7_UNORM = 98, DXGI_FORMAT_BC7_UNORM_SRGB = 99,
lib に dxgi_beta.lib が存在しているので、おそらく dxgi.lib の代わりに
こちらをリンクすれば新フォーマットが使えそうです。
help 内の扱いが変わったことから予想してましたが、やはり DXGI は共通のままで
(DXGI2 のような) 新インターフェースに分岐しませんでした。
もしかしたら D3D10 でも使えるようになるのかもしれません。
追加された B8G8R8A8 (ARGB) 系は以前からある
DXGI_FORMAT_B8G8R8A8_UNORM = 87 の追加バリエーションとなります。
これ D3D10 の一般的なフォーマット R8G8B8A8 (ABGR) と逆順です。
Direct3D9 以前ではこっちの方が標準でした。
(D3D関連 DDSテクスチャの取り扱い)
仕様として隅に追いやられてたはずのフォーマットを正式な扱いに戻したのは、
やはり D3D9 ShaderModel3.0 以前の GPU に対応するために、必要だったからでは
ないでしょうか。
BC6/BC7 が新しい圧縮テクスチャ形式です。
詳細はまだわかりませんが、F16 が使われている BC6 の方が HDR 圧縮形式だと
考えられます。
Preview (beta) とはいえ、1つの SDK に 3世代のバージョンが同居しているのは
Direct3D で初めてです。
DXGI は D3D10 でも D3D11 でも共通に用いられますし、HLSL コンパイラは全世代で
共有されています。
アップデートの単位が徐々に細分化しているため、バージョンの区切りはこれから
ますます曖昧になっていくかもしれません。
関連エントリ
・Direct3D11 (DirectX11) シェーダーの書き込み RWBuffer 他
・Direct3D11 の遅延描画、スレッド対応機能、シェーダー命令
・Direct3D11 Technical Preview D3D11の互換性、WARP Driver
・Direct3D11 シェーダーの動的リンクやテクスチャ
・Direct3D11 マルチスレッドのための機能
・Direct3D11 テセレータとシェーダー
・Direct3D11 のパイプライン
・Direct3D11 Compute Shader など
・Gamefest2008 と Direct3D 11