Atom PC は低発熱および低消費電力が特徴です。
同時にチップが小さい故の低価格も魅力。
Netbook が盛り上がっているのもそのためで、低価格化路線と
今まで作れなかったような低発熱な小型軽量 PC の実現に期待が持てます。
SHARP といえば常に一歩進んだ小さなモバイルデバイスも得意とするメーカーでした。
そのため新メビウスも超小型な PC の再来か、等と期待したのが今回の正直な本音。
実際に現れたその「新メビウス」はいろいろな意味で予想外のパソコンでした。
その特徴はサイズでも価格でも無く、新機軸の液晶画面がついたタッチパッドです。
ユーザーインターフェースとして有望視されている画面を直接触れるタッチパネルが、
メイン画面ではなくもう一つの画面として「タッチパッド」部分に内蔵されています。
タッチパネル PC とノート PC のちょうど中間に位置するポジションで、
使い方も実に様々です。
・タッチパッドの拡張として。マルチタッチ対応版
・ペンが使えるタブレットの代わり
・独自のタッチパネル用アプリが動くプラットフォーム
おそらく SHARP が開発した「光センサー液晶パッド」が先にあって、それを
どのように活用するか試行錯誤した結果だと思われます。
過去に存在していないものなので、まだ本当の使い方が絞られていません。
可能性は大きいため、従来にないわかりやすい操作性を実現した新しいユーザー
インターフェースに化けるかもしれません。
今回幅広くモニターを募集した意図もここにあるのではないでしょうか。
そしてもう 1つ PC-NJ70A が示したのは Atom PC の新しい使い道です。
しばらく使用してみてわかるのは液晶センサータッチパッドは結構消費電力が大きい
のではないかということ。
メイン画面としても使えそうな高解像度の画面がもう 1つついているわけだし、
光センサーを使ったポインティング処理はそれなりの演算能力を必要としている
のかもしれません。
このような負担となるデバイスを内蔵できたのは Atom PC だからこそ。
すなわち 3つ目の路線。
(1) 低価格路線
(2) 低消費電力&低発熱ゆえの小型化路線
(3) 低消費電力&低発熱なので、他のデバイスを取り込む余裕ができる
このように考えていくと Netbook プラットフォームを採用した理由もわかる気が
します。
以下普通のレビュー
●外観
上面と内面は光沢のある仕上げです。
特に液晶タッチパッドはパームレスト部と一体化しており、継ぎ目のない
アクリルカバーで覆われています。
汚れがつくとすぐに気になってしまうのは他の光沢仕上げの PC 等と同じ。
対して裏面はざらつきのある EeePC 701 のようなプラスチックで、滑り止めの波状の
加工が施されています。透明感や高級感はありませんがこちらの方が汚れが目立ちません。
インターフェース類は左右のサイドのみ。後ろはバッテリー、前はステレオスピーカー。
この PC のバランスを考える上で、かなり割り切って作った部分といえます。
特筆点は左手前側面にある排気口とその隣のペンホルダ。
●キーボード
比較的固めながらしっかりしたキーボードは個人的には好印象です。
変形キーもありますが右一列のみで済んでいるし、
[1] の左に [全/半] キーも配置されています。
[変換][ひらカタ] 周りの配列も標準的でキートップも滑りません。
●キータイプとタッチパネル
実際にキータイプしていて問題となるのはむしろタッチパッドの方です。
液晶画面があるせいか想像以上に横に大きな面積を取っています。
ホームポジションでキータイプしているとどうしても右手親指が触れてしまうのです。
・タッピング (タッチで左ボタン相当) を禁止する
・キー入力中はマウスモードからタッチモードに切り替えておく
・外付けマウス接続中はマウスモードにならない設定にしておく
等の対策は取れるかもしれません。
幸いフラットで継ぎ目がないのでソフトウエアで対処できそうです。
将来何らかのタッチパッドアプリを作ることが出来れば、有効面積をエリア指定で
制限したり、スクロール領域を設定することも可能でしょう。
まずは SDK 次第。
●キータイプとマウスボタン
もう一つの難点はボタンクリックが遠いことです。特に右クリック。
液晶パッドの面積が大きいので、ホームポジションに手を置いたままだと
少々がんばって指を伸ばすことになります。
左クリックは何とか。右クリックは完全に手をずらす必要あり。
タッチパッドは本体の中央に置かれているので、ホームポジションからは右寄りに
なります。さらに本来右ボタンがあって欲しい場所にはモード切り替えボタンが!
右ボタンはますます遠くなっています。
キータイプを中心に考えるとこのボタン配置は使いづらい代物です。
せっかくのマルチタッチ&液晶パネルなので、マウスボタンもパネル内に作れたら
良いのではないでしょうか。マルチタッチ対応なら同時押しも出来るし、位置も好みで
並べられます。真ん中ボタンだって作れるでしょう。
触って区別がつくように透明なシールを周囲に貼って段差つけて、、といった工夫も
必要かもしれません。
●タッチパッド・マウス操作
マウスモードでのカーソルの追従性は若干遅延を感じます。
初期の頃の低速なワイヤレスマウスを使用しているような印象です。
コントロールパネル → 電源オプション → プラン設定の変更→ 詳細な電源設定の変更 電源オプションのダイアログが開くので シャープノートパソコンの設定 → サブ画面センサー設定 → バッテリ駆動: 処理優先 電源に接続: 処理優先
上記のように サブ画面センサー設定 を「処理優先」にすると多少改善するように
見えます。
原因をいろいろ考えてみましたが、どうも一般的な静電容量式タッチパッドと
比較すると初動作の遊びが大きいようです。
数ミリ動かしただけでは反応せず、大きめに動かすとついてきます。
ペンの手描き入力でも、慎重にゆっくりペンを動かすと即座には点が打たれず
短い折れ線の集まりになることがわかります。
ペンを動かさずに点を打つとその場所に現れるので、ピクセル分の分解能は持っている
ようです。この辺の挙動は誤動作対策かもしれません。
今後ドライバの更新等で改善されることを期待します。
●タッチパッド・手描き入力
タッチ操作では「手描きイラスト」機能によってペンで直接絵を描くことが出来ます。
いわゆるタブレット代わりです。
ユニークなのは単なるお絵かきソフトにとどまっていないこと。
右上にあるキャプチャボタンを使えば、メイン画面の任意の部分を取り込んで
その上に重ねて描けるようになっています。
デスクトップだろうとアプリだろうと落書き自由。
キャプチャ自体はボタンを押した瞬間に行われるようで、その後の範囲指定は取り
込んだ画像の切り出しに相当します。タッチ操作で拡縮&スクロール可能。
画面の追従性が悪いので最初は操作がわかりにくいかもしれませんが、
サブ画面の解像度が高いことは十分実感できます。
↑デスクトップの取り込み
取り込んだ&描いた絵はピクチャフォルダに保存可能。
編集画面が少々狭いけど、PC 操作中にいつでも呼び出せるのはおもしろい仕組みです。
ペン操作の PDA や電子手帳を長年使ってきましたがどれもこれも感圧式でした。
ペンの先端が触れるだけで反応する軽さは今までにない感覚です。
これも光学式ならでは。
ペン座標の判定は残念ながら同時に一点のみでした。
Windows7 付属の「ペイント」だと、マルチタッチ環境なら複数の指で同時に線が
描けたりします。
せっかくのマルチタッチセンサーなのだから、マルチペン対応もぜひ希望します。
マルチだと、一人が描いている隣で別の人が落書きできたりするのです。
関連エントリ
・メビウス PC-NJ70A (3) Windows7 RC を入れる
・メビウス PC-NJ70A (2) 初期セットアップとメモリ増設
・メビウス PC-NJ70A 液晶センサータッチパッド
・メビウス PC-NJ70A 画面解像度とタッチ