●移植された!
「おくやくん」 は SHARP のポケットコンピュータ、PC-1245/50/51/55 で動くゲームです。
工学社の雑誌、PiO 1985年の 11月号に掲載されたので、もう 24年も前になります。
その古いゲームを、なんと 24年の時を経て他の機種に移植してくれた方が現れました。
下記ページで公開されています。
こちらには新たに移植された PC-1450 版、PC-1260/61/62 版(*1)がありますし、
16ステージ分オンメモリに改良された PC-1251/55 向けも掲載されています。
BASIC による PC-G801/E200 版もあります。
ページに掲載されているプログラムは音声形式 WAVE ファイルで、これをカセット
インターフェースから読み込ませるとポケコン本体に転送できるという仕組みです。
このカセットインターフェース用のセーブ音を聞くだけでもう懐かしくて涙が出そうです。
●電卓みたいなコンピュータ
SHARP のポケコン PC-1245/50/51/55 や PC-1260/61/62 は非常に小さくて薄くて
ただの電卓にしか見えません。
今更こんな写真を見せられても、コンピュータとして使い物になるのかと疑問に思う方が
きっと多いことでしょう。
いや当時もそう思いました。
でもそこが魅力の一つでもあります。
見かけは薄っぺらな関数電卓なのに、BASIC だけでなくマシン語プログラムが走り、
高速なゲームが動いてサウンドの演奏もできます。当時としてはどれも驚くべきもの。
見た目のギャップと実力の差、中に詰まった感じが良かったのです。
●ゲーム内容
横画面のアスレチックぽい仕様となっていますが、実際は迷路ゲームです。
画面が 1行しかないことを逆手に取り、先が読めず決断を迫られることと、若干の
暗記力が必要でした。
一番の特徴はドット単位の上下スクロールです。
VRAM 構造上の制約もあったため、掲載時はまだ珍しかったように思います。
2D 風のフィールドを移動できてマシン語で比較的高速に動作するし、
内容もかなり緩いゲーム性だったこと、コンストラクションモードがあって自由に
面データを作れたのが良かったのかもしれません。
●おくやくん作成の話と機械語プログラミング
このゲームを作った目的はやっぱりスムーズな上下スクロールでした。
ただ最初はそこまで深く考えていなかったため、あまりきれいな作りではありません。
結局はライン単位でパターンを展開しているし、スクロールにキャラが付いてこない
ところも不完全です。
もっときちんと作っておけば良かったと、ここだけがずっと心残りでした。
完全に 2D 空間を滑らかにスクロール出来たのは、その後の別のゲーム
トロピカルアイランドだったように思います。
おくやくん はほぼ全部マシン語で書かれています。
アセンブラもパソコンも無かったので、紙に手でプログラムを書いていました。
ニモニックは使わずに 16進数で命令を並べ、自分で相対ジャンプを数えて、ある程度
出来たらマシン語モニタで直接 RAM に命令を書き込んでいきます。
これだとあとから大きな修正ができないので、プログラミングは完全にボトムアップです。
キー入力ルーチンやサウンド部分から始めて、パターン転送ルーチンなど小さい部品を
作り、テストしながらメモリ上に配置していきます。
ゲームとして全体が繋がるのは最後でした。
RAM が 2~10KByte しかなかったおかげか、こんな方法でも十分だったのです。
記憶メディアはカセットテープしかなかったものの、ポケコンは今で言うスリープ相当。
RAM の内容はバッテリーで保持されています。
ファイルやディスクといった概念もなく、メモリを書き換えたらそれがすべてです。
プログラムもエディットしたステージデータもずっと RAM 上に保存されています。
そのためプログラム実行時は最初に必ず初期化ルーチンが必要で、ワークエリアを
クリアしたり、パラメータの初期値を転送しなければなりません。
いつも最後に作るのがこの部分でした。
その頃には RAM エリアはすでに後ろまでいっぱい使い切っており、たいてい入る場所
が無くなっています。そこで逆にアドレスの前方に伸ばしていきます。ぎりぎりまで
BASIC エリアを浸食するようになるわけです。
プログラムの一番先頭にワーク初期化用のデータテーブルがあったり、プログラムの
スタートアドレスが途中の中途半端な番地になっているのもそのため。
ちなみに 「おくやくん」 というのは当時の友人、奥山君のこと。
●ポケコンユーザー
移植してくれた柳田さんありがとうございました。
今後他の機種へも移植を行っていくとのことです。
今年の 2月にもLC-3 コンパイラが欲しいとの問い合わせもあって、意外にもまだまだ
ポケコンを使ってる方が結構いらっしゃるようです。
このように問い合わせのメールをいただく度にいつも驚いています。
そして謝ります。すみません、コンパイラはまだ用意できてませんでした。
*1: PC-1260 には過去にも移植版があったようです。森岡氏 PC-1260
関連エントリ
・BASICコンパイラと手書き原稿の時代
・28年前のモバイル PC-1211 他
・20年前のモバイル PC-1417G
はじめまして,昔1260/61/62への移植(Pioスペシャルに掲載)をしました森岡です.面白いゲームだというので感動して,ダンプリストを16進のまま読んで移植したのが良い思い出です! 今ではそんな凄い芸当はできません(笑.まだ実機が保存してあって,カセットテープもwavに吸い上げてあるので,今でも動かせます.
良いwindows用エミュレータをご存知でしたら,どなたか教えてくださいませ.
はじめまして。昔 PiO で 1260 版見た覚えがあります。
思い出して検索したら森岡さんのページがみごとヒットしました。
当時はどんな方が移植してくれたんだろうと思ってましたが
20数年ぶりにこうしてコメントいただけるとは。
そうそう、ほんとに昔はダンプリスト読み書きしてました。
それにしても皆さん結構保存状態が良いのですね。
カセットを吸い出して保存しておくとか、思いつきませんでした。
PC-1417G版(暫定版ながら)リリースしました。もし、実機があるようでしたら動作させてみていただけますか?当方、16KB増設済みなので、ノーマルでの動作試験を行っていないものでして…(苦笑)
はじめまして、
雑誌を通じ大変お世話になりました、
森岡様の発表したプログラムのおかげで
いい時代を過ごせていただきました。
当時、私もPC-1261をメインで使っていて
LC-3コンパイラー大いに使わせていただきました
このコンパイラーのおかげでこのポケコンを超える
マシンは未来永劫ありえないとおもわせたほどです
何もかもが懐かしく熱いい時代でしたね、
そのせいかオークションで複数購入しそのうちの1台が
LC-3コンパイラー最高傑作であるCRARYヌギ麻雀専用のマシンとなっています。(大汗)
本題ですがLC-3コンパイラーとそれを使ったプログラムもカセットに保存していますので何かお役に立てるようでしたらおっしゃってください。
はじめまして ひろきちさん
LC-3 の生データ欲しいです。よろしければメールいただけないでしょうか。
バイナリかテキストなら web に載せられると思いますので。
はじめまして!こんなページがあるなんて!
私は当時は、単なる紙面のプログラムを打ち込んで遊んでいたパソコン好きの小学生でしたが、偶然たどり着いてしまいました。
(いや、ソノシートからカセットに落としてロードしたんだっけかな?)
当時小学5年生、Pioを見ながら打ち込んで縦スクロールに度肝を抜かれたのを覚えています。
小学5年生の子供から見たら小笠原さんのようなPioにゲームを掲載している人たちは神様みたいな存在でした(笑)
こちらのブログの2018/01/03のPC-12シリーズの解説など涙が出そうな思いです。
Pioは毎月、すげー、まじかよー、こんなことまでできるのかよー!信じられねー!の大興奮の連続でした。
小学5年生がPC-1245を買った経緯は、同級生(父がエンジニア)の家に富士通のFM-7フルセットやI/Oなどのバックナンバーがずらりとあってよく雑誌のプログラムを入力したりして遊んでいたのですが、理系でも何でもない平凡な我が家はコンピュータに理解もなく高額で小学生の願いはあえなく却下。仕方なくお年玉でディスカウントショップでPC-1245とCE-124を購入。Pioに出会って…みたいな流れです(笑)
当時ふつうの小学5年でBASICまではなんとか行けたのですが、マシン語はちょっと年齢が早すぎました(笑)
いかにも80年代な表紙の、ポケコンマシン語入門、まだ持っています!
いろいろ懐かしい思い出を思い出させて頂けて感謝です!
はじめまして suzuki さん
小学生の頃に遊んでいただけたようで、ありがとうございます。
Pio も I/O も懐かしいですね。
MZ-80C や PC-8001 のように、最近流行りのなんとかミニでポケコンが復活しても
いいかもしれないですね。